新しい会社・新しい部署・新しいプロジェクトに参加したとき、それまで通用していた知識だけではどうにも仕事が回らないことがあります。
今回は、私が初めてシステム開発の要件定義を担当したとき、仕事(この記事では業務知識)のキャッチアップがうまくできず、指示待ち作業者的な貢献しかできなかった失敗談です。
当時の状況
当時、私はシステム開発のプロジェクトに参加することになりました。そのプロジェクトは既にキックオフしており、私は途中から合流した形でした。
ミッションは、「当時の顧客(仮にA社)のとある業務をシステム化する上で、どのような機能が必要なのかを定義し、それをA社と合意をする」こと。いわゆる要件定義でした。
A社とは週次で定例ミーティングを開き、A社の既存業務とシステムへの要求をヒアリングしつつ、システム化する上で何を検討すべきなのか、それを検討するために何をA社に確認してもらうのか、ときには要求自体にそもそもの意義はあるのか、などを議論していました。
例えばシステムからエクセルの帳票を出力したいと言われれば、
- 出力する帳票の仕様は何か
- 出力機能はどの部門が使うのか
(全社員が出力しても良いのか) - システム内のデータをシステム外に出力する上で、
コンプライアンスの観点から何か手当は必要か
(例えば出力記録を取るなど)
などなど、論点が沢山でてきます。これら論点は闇雲にA社にぶつけるわけにはいきません。例えば帳票の仕様はなにか?と聞かれてもシステム会社ではないA社が回答することは難しいでしょう。
この論点はさらに噛み砕き、帳票に出力する項目は何があるか、項目はデータによって出し分けることはあるか、各項目は帳票内でどのように配置するかなど、具体化していく必要があります。
このように、私自身のタスクは、ある領域の機能について、こうした論点の洗い出し&分解&整理を行い、ミーティング資料を作成して顧客と議論することでした。
力不足の痛感
こうした業務の中で力不足を感じることが多々ありました。
スキル不足
論点を把握する力(会議の中で論点がコロコロ変わる)、整理する力、論点に対する仮設を立てる力、また、これらを顧客とコミュニケーションする上で適切に伝えるための資料作成スキル&プレゼンテーションスキル。ここら辺のスキル不足については、書籍を読み、また場数を踏んでいくうちに徐々に改善をさせていきました。
地道に向上させていく部類のスキルで、今も訓練中です。
業務知識不足
どちらかというとこちらが重症でした。
それまでSEとして働いてきて、システム面の基本的な知識・考え方については理解していたはずですが、上述したタスクを進めていく上では、どうしても顧客の業務について詳しく知る必要があります。
しかし、プロジェクト参加時に一通りの引き継ぎは受けたものの、自分がやったことのない業務に対して中々理解が深まりませんでした。そもそも自分がやるわけではない業務を覚えようというモチベーションも中々高まりませんでした。生粋の勉強嫌いですし…。
とはいえ顧客の業務について知らなければ、顧客と深い会話はできません。例えば顧客に
「〇〇税を計算する機能がほしい。精算業務で〇〇税を加味する必要がある。」
と言われた時に、この精算業務で顧客が何をしているのかを抑えていないと、
「以前検討したA機能も精算業務で使うため、同じ画面で起動するのが良さそうですね。また、精算業務では△△費用を計算していると思いますが、〇〇税を機能化するなら△△費用もシステムに登録が必要かと思います。△△費用は…」
というような、業務の観点から論点の洗い出しや提案はできません。(適当な例ですが)
結果的に、このプロジェクトにおいて、私は指示を受けてから動く作業者的な貢献しかできませんでした。業務知識のキャッチアップが一番の鬼門だったことを今でも痛烈に記憶しているのです。
原因と対策
周りのメンバーからは「わからないことは何でも聞いて!」と、とても質問Welocomeな温かい環境でした。にもかかわらず、業務知識がなかなか身につかなかったのは何故か。
今振り返ると、当時の私は何を聞くべきかすらわかっていなかったため、身動きがとれていなかったように思います。要するに「何がわからないのかもわからない」状態です。
うーん、子供か!って言いたくなりますね笑。
対策は、「何がわかっているのか」を整理することだと今では考えています。業務は基本的に流れがあります。それぞれの業務には必ず目的が存在し、必ずその後の工程があります。まずは全体像を理解した上で、自分がわかっている工程を整理する。
これによって、パズルのように全体の枠の中でわかっている箇所のピースが埋まります。すると、逆にまだ埋まっていない空白も可視化されます。
それこそが自分がわからないことであり、周りに質問する・資料から確認するべきことです。
「ここまではわかっているが、このあとどのような業務になるか?それは何故そのようなプロセスになっているか?」
このような質問をあの時できていれば…。
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